「これ以上借金を返せない・・」「借金から逃れて人生をリセットしたい」
このように、借金苦から「夜逃げ」を検討する人は少なくありません。
しかし結論からいうと、夜逃げはやめておいた方がよいでしょう。
なぜなら、夜逃げ後の生活は想像以上の問題が待ち構えているためです。
本記事では、夜逃げした後の生活や夜逃げのデメリットについてまとめています。
さらに、夜逃げせずに借金問題を解決させる方法についても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
夜逃げとは?

夜逃げとは、人目につかないようこっそりと行方をくらますこと。
誰にもバレないよう、夜間に行われることが多いことから「夜逃げ」と呼ばれます。
夜逃げは引っ越すことを周囲にしられないために、住んでいた家をそのままにして最低限の荷物だけ持って出ていくことも。
夜逃げの理由はさまざまですが、もっとも多い理由は「借金苦」です。
借金返済ができず、日々の厳しい取り立てに詰められた人が、その状況から逃げるために夜逃げをする傾向にあります。
しかし、夜逃げ自体は簡単にできても、その後の生活はいくつもの困難が待ち受けています。
次の章で詳しくみていきましょう。
夜逃げするとその後はどうなる?

借金苦から、無事に夜逃げすることができたとしても、その後の生活は困難の連続でしょう。
まず、夜逃げによって借金から逃れられたとしても借金自体がなくなるわけではなく、むしろ増え続けてしまいます。
それはどういうことなのでしょうか?
以下で確認していきましょう。
夜逃げをしても借金は減らない
夜逃げをしても、借金が帳消しになるということは絶対にありません。
一方で、借金には時効があり、クレジットカードや消費者金融からの借金の時効は、5年と民法で定められています。
「5年だったら簡単に逃げきれそう」と感じるかもしれませんが、借金の時効は債権者(貸金業者)が権利を行使しない場合に限り成立するものです。
つまり、時効がくる前に債権者が「時効の更新」や「時効の完成猶予」を行えば、時効の期間がリセットもしくは時効の成立が一定期間引き延ばされる仕組みです。
貸金業などの債権者が権利の行使を行わないことは考えにくいため、行方をくらませたとしても借金が時効を迎えることは極めて難しいでしょう。
よって、夜逃げをしたとしても借金が帳消しになるどころか、時効の更新や時効の完成猶予によって時効を迎えることは永遠になく、加えて逃げ続けた分だけ遅延損害金が膨らみ、返済額が大きくなってしまう可能性があるのです。
夜逃げしても訴えられる!
「夜逃げして、誰も自分の居場所はわからないから取り立てされることはない」と考えているのなら、それは大きな間違いです。
たとえ、夜逃げして行方をくらませたとしても、訴えられる可能性は十分あります。
先述したとおり、時効の完成猶予を成立させるには以下の3つの方法があります。
・債務者あてに内容証明郵便を送る
・裁判所に訴訟を提起する
・支払督促の申し立てを行う
上記のうち、内容証明郵便や支払督促の申し立ては、債務者の住所が判明している必要があります。
しかし、裁判所への訴訟提起については、債務者が所在不明でも公示送達(裁判所の掲示板に【公示送達の呼出状】が掲示されることで相手に伝えたと判断すること)という手段で裁判を起こすことが可能なのです。
よって、いくら夜逃げをして所在不明となっても、借金から逃れられることはなく、最終的には債権者に裁判を起こされてしまう可能性が極めて高くなります。
夜逃げはその後が大変!夜逃げのデメリット

では、夜逃げをした後の生活がどのようなものなのでしょうか?
借金を理由に夜逃げした場合、今よりも悲惨な状況に陥ることは間違いありません。
夜逃げの4つのデメリットについて、ひとつずつ解説していきます。
利子が増え続ける
一般的に借金を滞納すると、「遅延損害金」が発生します。
遅延損害金とは、返済期日までに借金を返済しなかった場合に課せられるペナルティのようなもの。
注意すべき点は、返済期日の翌日から返済するまで日々加算され続けていくということです。
一般的に、消費者金融などで設定されている遅延損害金の利率は20%とかなり高いため、雪だるま式に返済金額が増え続けることになります。
もちろん、夜逃げして所在不明になったからといって、遅延損害金が加算されないことはありません。
訴訟となった場合、借金に加えて遅延損害金も請求されるため、一刻も早く返済することをおすすめします。
住民票を移すことができなくなる
夜逃げをすると、居場所がバレてしまうため住民票も移せません。
住民票を移せないことで以下のような支障が出てきます。
・行政サービスが受けられない
・国民健康保険の手続きが出来ない(医療費が全額負担となることも)
・運転免許証の更新ができない
・選挙で投票できない
・5万円以下の罰金
本来、行政サービスは住民票の住所に住んでいなければ、サービスを受けることができません。
もし、夜逃げ生活が苦しくなった場合に、頼りになるのが生活保護ですが、住民票を移せなければ受給は難しくなってしまいます。
また、夜逃げ前に生活保護を申請していても、状況がバレればストップされる可能性も高いでしょう。
現住所の証明ができないことで、銀行口座の開設ができない、運転免許証の更新ができないなど、生活のあらゆる場面に影響が及びます。
引越しや再就職が困難になる
夜逃げ先での新居探しもかなりハードルが高いでしょう。
とくに、借金苦で夜逃げした場合、ブラックリストに登録されている可能性が高く、これにより賃貸契約時の保証会社による審査を通過するのが非常に困難になってしまいます。
ブラックリストに登録されている事実がわかれば、まず審査の通ることは不可能でしょう。
また、住所不定の場合、就職するのもかなり難しくなってしまいます。
子どもが無戸籍になる
夜逃げした先で子どもが生まれた場合、夜逃げ先で出生届を提出することができなくなります。
つまり、子どもが無戸籍になってしまうということ。
無国籍ということは、保険証も発行されないため病気の際は全額自費となり、もちろん児童手当の支給もありません。
また、小学校や中学校に通うことも困難になるでしょう。
このように、家族がいる状態での夜逃げは非常に大きなリスクが生じてしまいます。
夜逃げ前に解決する方法

厳しい取り立てや今後の絶望感から、衝動的に「逃げ出してしまいたい」と思うかもしれません。
しかし、これまで説明したとおり、夜逃げ自体はできても、その後の生活は過酷極まりないものです。
夜逃げをするのではなく、債務整理を検討しましょう。
債務整理をすれば、法律で認められている手段で借金を減額・免除してもらえるので、自分の状況に合わせた方法で生活を再建できます。
任意整理をする
任意整理とは、裁判所を介さず、直接債権者と交渉して利息のカットや支払い期間を延長させる手続きをいいます。
利息のカットや支払い期間の延長により毎月の返済負担の軽減につながります。
しかし、任意整理の場合、借金元本の減額はできないため、効果が薄いと感じる人もいるでしょう。
その場合は、以下の個人再生や自己破産の検討をおすすめします。
個人再生する
個人再生とは、裁判所に申立てをして、借金の減額を認めてもらい、分割して返済する手続きのことです。
任意整理では元金を3〜5年で返済するのが原則であり、利息しかカットされないため、収支の状況からすると返済ができない場合もあります。
このような場合でも、個人再生をすれば、借金を5分の1〜10分の1程度に減額してもらえるため、分割して返済することが可能となります。
また、ローンを組んで購入した自宅を残すことができる(住宅ローン特則)のも個人再生の特徴です。
自己破産する
自己破産とは、裁判所に申立てをして、借金の免除を認めてもらう手続きです。
他の手続きと異なり、基本的にすべての借金をゼロにしてもらえるので、生活を早く立て直すことができます。
まとめ
今回は、夜逃げしたその後の生活についてや、夜逃げのデメリット、解決策について解説しました。
「もうどうにもならない…」と、逃げ出したくなる気持ちは分かりますが、原因が借金問題の場合、夜逃げをしても解決できません。
解決できないどころか、夜逃げ先での生活は今よりももっと悲惨な状況になることでしょう。
どうしても返済が苦しい場合は、夜逃げするのではなく、一度弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。