【借金滞納の末路】給料が差し押さえられた時の対処法

こんにちは、弁護士の南です。

皆さんは支払いを滞納すると、給料の差し押さえが執行される、と聞いたことはありませんか?

「給料が差し押さえられたら生活できなくなってしまう…」「給料全額差し押さえられるって本当?」

そんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃると思います。

給料が差し押さえになるとどうなるのでしょうか?また、差し押さえを回避することはできるのでしょうか?

今回は、差し押さえが執行されるとどうなるのか、そして差し押さえにはどう対処すべきなのかを解説していきます。

「差し押さえって聞いたことはあるけど、実際何をどのくらい回収されるんですか?」そんなご相談をよく受けます。

一体どのような流れで給料が差し押さえになってしまうのか、いくら回収されてしまうのか、気になっているという方も多いのではないでしょうか?

本記事では、まずは差し押さえがどれほどの効力をもつのかお伝えします。

その上で、どのような流れで差し押さえが執行されるのかを説明し、最後に、差し押さえになってしまった時の対処法をご紹介します。

「返済が厳しくなってきて、差し押さえが執行されるのではと不安…」「差し押さえになった時の対処法が知りたい」

という方はぜひ最後までご覧ください。

弁護士の視点から、正しい対処法をお伝えします。それではいきましょう!

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給料が差し押さえられるとどうなるのか

差し押さえの正しい対処法を解説する前に、まずは給料が差し押さえられるとどうなるのか理解しておきましょう。

「差し押さえが執行されても、少ししか回収されないんじゃない?」そうタカを括って、借金問題を放置していませんか?

差し押さえの執行による悪影響は、給料が減ってしまうだけではありません。順を追ってご説明しましょう。

会社に知られる

借金や税金を滞納して給料が差し押さえが決定すると、まず最初に裁判所から勤務先の会社宛に差し押さえ通知書が届きます。

そのため、最初の段階で、債務者は給料が差し押さえられた事実を勤務先に知られてしまうことになります。

また会社は差し押さえ分の給料を債権者に直接払う手続きをする必要があるため、差し押さえによって余計な手続きが増えることになります。

給料を差し押さえられたことによって会社を解雇されることはありませんが、差し押さえの事実が知られることや会社に手間を増やした申し訳なさから会社に居づらくなることは考えられます。

派遣社員やアルバイトなどの非正規雇用の場合はさらに注意が必要で、給料の差し押さえを受けると、次の契約更新にマイナスの影響が生じる恐れがあります。

財産が差し押さえられる

勤務先に差し押さえ通知書が届いたあとは、実際に債務者の財産が差し押さえられることになります。

ここで差し押さえの対象になる財産は、大きく分けて次の3つです。

  • 給料(ボーナス・退職金を含む)
  • 預貯金
  • 車・不動産

【給料(ボーナス・退職金含む)】

給料の差し押さえを受けると、勤務先から支給される給料の一部が受け取れなくなります。

差し押さえの対象が給料の一部と決められているのは、給料は生活するための原資であるため全額差し押さえてしまうと債務者が生活できなくなるためです。

しかし、自営業者や会社役員の場合は、会社員の給料とは異なる取り扱いとなるため基本的に全額が差し押さえの対象となり、取引先に対する売掛金なども全額差し押さえられることになってしまいます。

【預貯金】

給料に加え、銀行や郵便局の口座に入っている預貯金も差し押さえの対象です。

しかも預貯金の場合は全額が差し押さえの対象になります。

銀行口座の預貯金額は入出金によって変動しますが、差し押さえとなるのは金融機関に差し押さえ命令が送達されたときの預貯金残高と決められています。

差し押さえられた預貯金は別口座に移され、口座名義人は引き出せなくなります。

預貯金の残高よりも差し押さえ債権の方が多い場合は残高は0円になりますが、逆の場合は口座に残ったお金に影響はありません。

ですが、銀行振込で入金された給料の取り扱いには要注意です。

差し押さえになる金額が給料は手取りの一部と決められていますが、預貯金には制限がないため給料が振り込まれてしまうと預貯金の扱いになり、全額を差し押さえられてしまう場合があります。

しかも、預貯金の差し押さえは、債権者が給料日を把握している場合、給料が入金された直後を狙って行われることが多く、差し押さえされた分を差し引いてもある程度もらえると思っていた給料が、気づいたときには全部消えていたという事態になりかねません。

万が一、こうなってしまった時は差し押さえられてから1週間以内に裁判所に申し立てを行うことで、上限を超える金額の差し押さえは解除され、給料は手元に戻ってきます。

【車・不動産】

現金資産に加え、債務者名義の車や家などの不動産も差し押さえの対象となります

差し押さえになると、債権者は担保権を実行して不動産を競売にかけられることとなり、落札されると、そのお金は借金の返済にあてられます。

しかし、強制的な売却である、競売では、相場よりも低い価格で売られることがほとんどなので、家を失っても残っている借金を返済し続けなければならなくなった、ということもよくあります。

また車をローンで購入している場合は、所有権があるローン会社に差し押さえられることとなります。

住宅ローンの強制解約→口座凍結

給料や預貯金が差し押さえられても無視を続けていると、住宅ローンが強制解約になる可能性があります。

差し押さえられた口座のある金融機関で住宅ローンを組んでいる場合、ローンが残っている口座の預貯金が他の債権者から差し押さえられると、口座がある金融機関での借り入れが強制解約となってしまうからです。

住宅ローンが強制解約されてしまうとローン残額を相殺するために銀行口座が凍結されて、口座に入っている貯金が引き出せなくなります。

先ほど紹介した、口座の差し押さえは、預金口座にあるお金だけを対象に行われますが、口座凍結の場合は、預金の差し押さえに加えて、銀行口座それ自体が利用停止になってしまうのです。

そのため、口座が凍結されると出金だけでなく入金もできなくなってしまい、凍結された口座が給料振り込みや公共料金振替に使われていると、日常生活にも大きな影響が出ることになります。

ローン解約による銀行口座の凍結は、ローンが完済まで続くので口座凍結が数ヶ月になることも珍しくありません。

家族にばれる

給料が差し押さえられると、手取り額が減って生活に影響が出るため家族に借金を滞納していたことがバレることも避けられません。

税金を滞納していた場合は銀行口座が差し押さえされると通帳に「サシオサエ」と記帳され差し押さえられた事実が残ることにもなります。

給料の差し押さえだけでは債権が無くならない場合は、先ほど解説したように家や車を手放す羽目にもなるため、パートナーや子どもにも生活面でさまざまな不便をきたすことになってしまいます。

転職しても差し押さえが続く

「給料が差し押さえられたら転職すれば、差し押さえから逃れられるんじゃないの?」こんな風に思われた方もいるかもしれませんが、転職しても差し押さえは続きます。

最近では「弁護士照会制度」、「第三者からの情報取得手続き」という制度によって、債権者は債務者の口座、給料、保有する資産、勤務先などの情報を把握でき、差し押さえを継続できるのです。

したがって転職したという情報を債権者に情報を伝えていなくても、給料や預貯金が差し押さえられる可能性は高いといえます。

ここまでで、差し押さえの強制力がどれほどのものか、また、差し押さえが起こると生活にどのような影響を及ぼすのか、十分ご理解いただけたかと思います。

次に、具体的にどうしたら差し押さえが執行されることになるのか、解説します。

給料差し押さえの流れ

給料の差し押さえの放置によって生じるさまざまな悪影響についてご理解ただけたところで、

「差し押さえの影響はわかったけど、どんなことをしたら給料が差し押さえられることになるの?」と気になっている方もいるでしょう。

ここからは借金の滞納が始まってから給料が差し押さえられるまでの流れと期間を解説します。

滞納

借金の返済期限を過ぎても返済しないでいると、最初に債権者からの督促が開始されます。

督促の時期や方法は、返済期限の翌日から電話をかけてくる業者もあれば、数日~1週間後くらいに督促状を送付してくる例もあり、債権者によって異なります。

返済期限の翌日から遅延損害金が発生し、通常の元金や利息に加算されていきますが、返済条件に関しては大きな変化はまだありません。

催告書や差押予告通知、一括請求の知らせが届く

一定の期間滞納を続けると債権者から残高に遅延損害金を加えて一括で返済するように請求されます。

通常分割払いには、債務者は返済期限が来るまでは借金を返済しなくてよいという「期限の利益」がありますが、借金を滞納するとこの期限の利益を失ってしまうことになります。

滞納によって期限の利益を失うと分割払いは認められなくなり、残高を直ちに支払わなければならないというわけです。

一括返済を請求されるまでの期間は債権者によって異なりますが、61日以上もしくは3か月(3回分)以上を滞納したときが相場と言われています。

裁判所から支払督促や訴状

一括返済の請求を受けても返済しないでいると、債権者は支払督促または訴訟という裁判手続きに出ることになります。

裁判までの期間は債権者によってかなり幅があるのが実情で、滞納開始から3か月程度で裁判となる場合もあれば、1年が経過してもまだ裁判を起こされない場合もあります。

滞納から3か月が経過する頃から裁判を起こされる可能性が高くなると覚えておきましょう。

会社に債権差押命令が届く=会社にばれる

裁判を放置していると、裁判所から「仮執行宣言付支払督促」または「判決書」という債務名義が発行されます。

債権者は債務名義を取得すると強制執行の申し立てが可能になり、裁判所が債務者の財産を強制的に差し押さえ、債務の弁済の手続きを行います。

つまり、所有している財産を使って、強制的に借金を返済させられてしまうのです。

債務者が裁判を放置した場合、強制執行を申し立てられるまでの期間は、支払督促が届いてから約1か月後が目安となります。

裁判所が強制執行の申し立てを認めると、実際に給料などの差し押さえが行われます。

その場合、裁判所から債務者と勤務先の会社へ債権差押命令が送付されます。

強制執行の申し立てから1週間程度で会社に通知が届くことになり、この時に債務者財産を差し押さえられることが会社にもバレることになります。

給料から差し押さえ分を差し引かれるようになる

強制執行により差し押さえが始まると、給料から差し押さえ分の金額が引かれることとなります。

こうした差し押さえは借金を完済できるまで続くことになり、先ほども解説したようにボーナスや退職金もこれに含まれることになります。

差し押さえになる給料の金額は次のように決められています。

  • 手取り額の1/4
  • 手取り額が33万円を超えていてその差額が手取り額の1/4より高い場合は、33万円を超えた分の額

ただし、差し押さえ額には例外もあり、例えば差し押さえの原因が子どもの養育費や別居家族の婚姻費用など生活にかかわるお金の場合は、手取り金額の1/2が差し押さえの対象になります。

そして先ほども解説した通り給料が口座に振り込まれた直後の差し押さえ時は注意が必要です。

なお、複数社から差し押さえがされていても、差し押さえ額の上限額が変わることはありません。

給料が差し押さえされた時の対処法

給料が差し押さえになる流れも把握したところで、「手取りが減るのも職場にも迷惑がかかってしまうのも嫌だから差し押さえを避けたい」

と思われている方もいるでしょう。ここからは差し押さえを回避・解除する方法を解説します。

支払督促に異議申し立て

差し押さえが不当な場合は仮執行宣言付支払督促から強制執行が行われるまでの間に裁判所に対して

異議申し立てを行うことで、差し押さえを取り下げてもらうことが可能です。

異議申し立てによって実際に給料の差し押さえが取り下げられるケースは次のような場合のみとなります。

  • 債務者ではない不当な差し押さえの場合
  • 収入が年金や生活保護費しかない場合

残念ながら、定職に就いて給料を得ているケースでは、異議申し立てが認められることは少ないです。

任意整理

差し押さえ前の段階であれば、債権者に任意整理の交渉を持ちかけることで差し押さえを回避できます。

任意整理は債権者に交渉して返済条件を再調整し、3年〜5年の間に借金を完済する計画を立てる方法です。

任意整理は、裁判所を通さずに債権者と直接交渉するため勤務先にもバレる可能性が低い方法です。

また、利息のカットや返済期間の延長により毎月の返済額を減額できる可能性があるほか、車や家などの重要な資産を手放す必要もありません。

任意整理についての具体的なメリットについては、過去動画でも解説しているので、興味のある方はぜひご覧ください。

しかし給料差し押さえがすでに始まっている場合は、任意整理で差し押さえをストップすることはできません。

その場合は個人再生や自己破産に申し立てる必要があります。

給料差し押さえ解除の方法

債権者から給料などの財産を差し押さえられてしまったときでも、

一定期間以内であれば差し押さえを解除してもらう手続きをとれます。

一括返済

差し押さえがすでに行われていても残債を一括で返済できれば、債務の完済により以降の差し押さえが行われることはありません。

親族や知人からの支援を得て返済のための資金を借りる手段も考えられますが、個人間の借金はトラブルの原因となりえます。

可能な限り、借用書を交わして信用を確保するような工夫をすることが望ましいです。

しかし、「返済が難しいから滞納してしまったのに、一括返済なんてできない」そう思われた方も多いでしょう。

「一括返済は難しいけど、差し押さえは何とかしたい」という方は次の方法をおすすめします。

個人再生

一括返済が不可能な場合は、個人再生か自己破産の申立てをすれば差し押さえを解除できます

個人再生を利用するにはいくつか条件がありますが、裁判所に個人再生の申し立てをして受理されると差し押さえなどの強制執行を止めることができます。

加えて、借金の返済自体は続くものの元金自体を大幅に減額でき、任意整理と同様に家や車などの資産を残したまま手続きが可能です

また、差し押さえされていた分の給料はすぐに債務者の元に戻ってくるわけではなく、個人再生が確定したあとにまとめて受け取れるようになります。

期間は個人再生の手続きを申し立ててから半年~7カ月前後が一般的です。

自己破産

自己破産の申し立てが裁判所に認められると差し押さえが解除となり、ほぼ全ての借金の返済義務からも解放されることになります。

代わりに債務者の持つ財産を現金化し、債権者に返済することとなります。

自己破産で手元に残せる現金は99万円までと決められており、それ以外の財産はほとんどの場合手放さなくてはならないため、不動産や車も返済のために処分されてしまう可能性が高いです

自己破産の場合は同時廃止と管財事件で、差し押さえられた分の給料が手元に戻ってくるタイミングが異なります。

同時廃止では2~3カ月分の給料を留保され、自己破産が確定しないと手元に戻ってきませんが、管財事件では強制執行が中止されるとすぐに給料の全額が受け取れるようになります。

まとめ

今回は給与差し押さえを放置するとどうなるかと差し押さえの回避・解除の方法について解説しました。

給与差し押さえを無視すると自分だけでなく周りも面倒なことに巻き込んでしまうことが十分お分かりいただけたかと思います。

滞納していることに気づいたら早めに対応することを心がけましょう。もし差し押さえが始まっても債務整理によって差し押さえを解除することも可能です。

自分の状況に少しでも焦りを感じたら、まずは専門家に相談することから始めましょう。

具体的な債務整理の方法の決定には、本日解説してきたように個々の状況によって取るべき方法が変わるので専門家のサポートとアドバイスが不可欠です。

より具体的な対処法については専門家の力を借りることで、あなたの借金の負担を軽減してくれる可能性が大いにあります。

1人で悩んでいるよりも借金解決のプロに相談した方が早期解決につながりますし最適な選択ができるはずです。

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