奨学金は任意整理できる?返済できない時の救済措置についても解説!

「奨学金の返済が毎月厳しいので、任意整理がしたい」

奨学金の返済が困難になったとき任意整理は可能なのでしょうか?

一般的に、奨学金は低金利であるため返済負担が軽いと考えられがちですが、実際には返済に苦しむ方も少なくありません。

この記事では、奨学金の任意整理の可能性や、返済が困難になった際の救済措置について解説します。また、任意整理できない場合の債務整理の方法についても調査しました。

奨学金を任意整理する前に、知識を学んでいきましょう。

奨学金の返済ができないと起こること

奨学金は、学生の進学を支援するための重要な制度です。多くの学生が、経済的な支援を受けることで、教育の機会を広げています。

しかし、これらの支援金は法的な借金と同じ性質を持ち、返済が義務付けられています。返済が適切に行われない場合、様々な問題が生じる可能性があるでしょう。

まず、返済が遅れると、延滞金が発生し、返済総額が増えるという問題があります。この増加は、借り手の財政状態をさらに圧迫し、将来的な経済活動にも悪影響を及ぼします。

さらに、返済が滞ると、督促のプロセスが開始されます。この段階では、貸与元との関係が悪化し、信用情報にも傷がつくことがあります。

最悪のシナリオとして、訴訟に発展し、給料や財産の差し押さえといった、より深刻な経済的リスクに直面する可能性もあります。

しかし、返済に困難を感じる状況にあっても、解決策は存在します。最も重要な対策は、早期に貸与元との対話を開始することです。

返済猶予や減額制度の利用を申し出ることで、返済計画を再編成し、経済的負担を軽減することが可能です。

また、債務整理という法的な手続きを通じて、借金の減額や条件の変更を図ることもできます。これらの選択肢を適切に利用することで、奨学金の返済をより管理しやすくすることができます。

奨学金の返済が任意整理に向いていない理由

奨学金の返済が任意整理に向いていない理由は以下の3つです。

  • もともと低金利のため
  • 保証人とのトラブルになることがある
  • 交渉に応じてもらえない

奨学金の任意整理は、慎重に行う必要があります。それぞれ理由を詳しく解説します。

もともと低金利のため

奨学金の返済が任意整理に向いていない主な理由は、奨学金の金利がもともと低いことにあります。

任意整理は、利息制限法の上限金利まで金利を引き下げて借金の返済負担を軽減する手続きです。

奨学金の金利は通常年利1%程度と非常に低く、任意整理を行っても金利を大幅に下げることができず、返済負担の軽減効果がほとんど期待できません。

また、任意整理では最長60回(5年間)までの分割払いしか認められない一方で、奨学金の返済期間は通常より長いため、任意整理を行うと返済期間が短縮され、月々の返済額が増える可能性があります。

これらの理由から、奨学金の返済に際しては、任意整理よりも日本学生支援機構の減額返還制度や返還期限猶予制度の利用を検討することが推奨されます。

保証人とのトラブルになることがある

奨学金の返済に関して任意整理が適さない理由として、保証人とのトラブルのリスクが挙げられます。

奨学金のシステムでは、保証人が借り手の返済責任を共有します。つまり、借り手が返済を滞納した場合、保証人がその責任を負うことになります。借り手が任意整理を選択した場合、この責任が保証人に直接影響を及ぼし、返済の負担が保証人に移る可能性があるのです。

任意整理は、借金の一部または全部を減額し、返済計画を再構築する手続きですが、奨学金の場合、貸与機関が任意整理に応じることは少なく、また奨学金の利息が無利息または年3%と低いため、利息カットのメリットがほとんどないことが課題です。

このような理由から、奨学金の借り手が任意整理を行った場合、想定される利益は非常に限られています

さらに、任意整理を行った場合、その事実は信用情報機関に登録され、一定期間ブラックリストに記載されることになります。

この状況が保証人にも影響を及ぼすことがあり、特に保証人自身が任意整理を行った場合、その事実が奨学金の貸与機関に知られると、今後の金融取引に支障をきたす可能性があります。

例えば、新たな奨学金の借入が困難になるだけでなく、他の金融サービスへのアクセスにも影響が出るかもしれません。

返済が困難な場合は、日本学生支援機構が提供する減額返還制度や返還期限猶予制度の利用を検討することが望ましいです。

それでも返済が厳しい状況にある場合には、自己破産や個人再生といった他の債務整理の選択肢も考えられます。借り手だけでなく保証人の財務状況や将来的な影響も考慮に入れ、最適な選択をしましょう。

交渉に応じてもらえない

任意整理に応じてもらえない理由は主に、債権者側の都合や債務者の返済状況に関連しています。

債権者が内部規則で「任意整理に応じない」と定めているケースや、債務者が一度も返済を行っていない、または無職や無収入の状態では、任意整理の実行は困難です。

さらに、債権者が提示する和解の条件が過度に厳しい場合も、任意整理のプロセスを進めることができないことがあります。

奨学金が返済できない時に検討すべき救済措置

奨学金が返済できない時に検討すべき救済措置は以下の2つがあります。

  • 減額返還制度
  • 返還期限猶予制度

奨学金の任意整理は一般的に推奨されておらず、さまざまなデメリットがあります。救済措置について、事前に学んでおきましょう。

減額返還制度

減額返還制度は、災害、傷病、またはその他経済的理由により奨学金の返還が困難な方に向けた支援策です。

この制度を利用することで、受給者は当初合意された月々の返還額を減額し、その代わりに返還期間を長くできます。

これにより、経済的に厳しい状況にあるにもかかわらず、毎月の返還負担を軽減し、返還を継続することが可能です。

適用期間は1回の申請につき最長12ヶ月で、条件によっては最大15年(180ヶ月)まで延長することが可能です。

この柔軟な対応により、受給者は返還計画を自身の経済状況に合わせて調整し、生活の質を維持しながら奨学金を返済することができます。

しかし、注意点もあります。この制度では、返還予定総額そのものは減額されません。実質的には返還期間が延長されるだけであり、長期にわたって返済することになります。

さらに、この制度の利用を申請する際には、災害や傷病、経済的困難を証明するための一定の書類が必要になります。これには該当する証明書や書類の提出が求められ、手続きには注意と正確さが必要です。

返還期限猶予制度

返還期限猶予制度は、奨学金の返還が困難な場合に返還を一定期間先送りできる制度です。

特に、災害や病気、経済的困難、失業などの厳しい状況に直面している個人に適用されます。

この制度の利用を通じて、対象者は返還義務のプレッシャーから一時的に解放され、困難な状況を乗り越えるための時間的余裕を確保できるでしょう。

この制度では、通算10年(120ヶ月)が返還を先送りできる限度とされていますが、特定の状況、例えば

・災害や病気の影響を受けている場合

・生活保護を受給している場合

・産前、産後休業や育児休業中の場合

・一部の大学校に在学している場合

・あるいは海外派遣中

この場合、10年という限度が適用されません。

申請プロセスにおいては、「奨学金返還期限猶予願」の記入とマイナンバーの提出、さらに返還が困難である事情を証明する書類の添付が必要です。

返還期限猶予の申請は1年ごとに必要であり、毎年審査が必要です。審査により承認された期間については、返還の義務が免除されます。

まとめ

奨学金の任意整理は一般的に推奨されていません

これは、任意整理が貸金業者との交渉を必要とし、和解が成立すれば返済負担を軽減できるものの、奨学金に関しては債権者である日本学生支援機構が交渉に応じることが少ないためです。

奨学金の返済が困難な場合、日本学生支援機構が提供する減額返還制度や返還期限猶予制度を利用しましょう。

奨学金の任意整理にお悩みの方は、知識のある弁護士へ相談しましょう。少しでもお困りごとがあれば、気軽にできるLINE相談がおすすめです。