こんにちは!弁護士の南です!
今回は、「裁判を起こされた後に債務整理はできるのか?」というテーマでお話をしたいと思います。
もしもあなたが借金の返済を滞納し続けてしまった場合、債権者から裁判を起こされることがあります。このとき、あなたはどんな行動をとりますか?
私の事務所でも、債権者から裁判を起こされて通知が届いたので、今から債務整理をしてなんとか事態を丸く収めたいという方が時々訪れます。
そこで今回は、これまで多くの借金問題を解決してきた弁護士の私が、裁判の通知後に債務整理をすることは可能なのか?ということについて解説していきます。
「裁判を起こされるまでどうしても行動を起こせなかった」「取り立てが怖くてどうすればいい分からなくなり無視してしまった」そのような方にとっては、これからどんな行動を取るべきか分かる1番貴重な記事になっているはずです。
また、そこまで深刻な状況にはなっていない人も、今後裁判所から通知が届く可能性は0ではありませんので、事前の対策という意味でぜひ最後までご覧ください!
任意整理とは?
まずはそもそも債務整理とは何かについて簡単に説明しておきます。
債務整理には自己破産、個人再生、任意整理の3つの種類があるのですが、今回は中でも最も利用されている任意整理について紹介します。
任意整理とは、裁判所を通さずに債権者と直接交渉し、利息や遅延損害金をカットしてもらった上で3〜5年で完済を目指すという手続きです。
任意整理のメリットは主に6つあって、それぞれ次の通りです。
- 将来利息・遅延損害金の減額・カットが可能
- 過払い金があれば元金も減額できる
- 督促・取り立てが原則ストップする
- 任意整理したい借金を選べる
- 家族や会社にバレずに行うことができる
- 家や車といった財産を残せる
その一方で、任意整理には次の4つのデメリットもあります。
- ブラックリストに載り、クレジットカードの利用や新たな借り入れができなくなる
- あくまで交渉なので、希望条件で和解できるとは限らない
- 任意整理後も返済が3〜5年続く
- 借金の元金は原則減額できない
任意整理は比較的安価でできて、周囲にバレずに行うことができるということで、日本で一番利用されている債務整理の方法です。
というわけで任意整理についてざっくり理解いただいたところでここから裁判を起こされても任意整理はできるのか?について解説していきます。
裁判を起こされても任意整理はできるのか?
結論から申し上げると、裁判を起こされた後でも任意整理をすることは可能です。
これには主に次の2つの理由があります。
- 裁判を起こされたとしても、当事者同士の話し合いをすることは禁止されていないから
- 債権者にとっても任意整理に応じるメリットが大きいから
そのため、裁判所を介さない当事者同士の話し合いである任意整理も、裁判を起こした後でも全く問題なく行うことができます。
仮に債権者が裁判で勝訴判決を勝ち取ったところで、債務者が自己破産をしてしまえば債権者のもとには何も残りません。
それどころか、債務者は貸したお金に加えて裁判費用を支払っているわけですから、完全な大赤字です。
それよりは、任意整理に応じて債務者に新たな条件で返済をスタートしてもらった方が、債権者にとっても圧倒的にプラスですよね?
なので、中には裁判を起こした後の任意整理には応じないという方針の金融機関も、ありますが、大多数は裁判を起こした後でも任意整理に応じてくれます。
ですので、裁判を起こされてしまったからといって諦めるのではなく、そのタイミングで弁護士事務所や司法書士事務所に相談してください。
ここが本当の正念場です。
ここで迷ったり諦めたりして行動せずにいると確実に状況は悪化し、最終的には給料の差押えなどの強制執行を受ける羽目になります。
意外と知られていませんが、裁判を起こされた後に任意整理をする人はたくさんいるため、何はともあれ行動することから始めてください。
ここまで、裁判を起こされた後でも任意整理はできるということをお伝えしてきました。
任意整理をするべきタイミング
次に気になるのが、裁判を起こされた後にどのタイミングで任意整理をすべきかという点ではないでしょうか?
判決が下って強制執行が確定した段階で任意整理をしても遅いわけですから、少なくとも判決内容が確定する前に任意整理をしないといけません。
ここで問題となるのが、「“判決内容が確定する前”とは、具体的にいつまでを指すのか?」という点です。
これについては、実は裁判所から送られてくる通知の種類によって異なるため、これから詳しく解説していきたいと思います。
裁判所から送られてくる通知は主に「支払督促」と「訴状」の2つです。
支払い催促の場合
まずは、裁判所から送られてきた通知が支払督促だったケースから解説します。
支払督促が送られてきた場合、あなたが真っ先にすべきことは、その通知が「支払督促」か「仮執行宣言付支払督促」かを確認することです。
支払督促は、申立人の申し立てに基づいて裁判所書記官が金銭の支払いを求める制度で“受け取った側から異議申し立てがなければ”、判決と同じ法的効力を持ちます。
ここで重要になるのが、“受け取った側から異議申し立てがなければ”という点です。
任意整理をしたいのならば、これを受け取って2週間以内に、督促異議の申し立てをしなければいけません。
その後、任意整理を専門家に依頼するというのが基本的な流れになります。
もしも、ここで2週間以内に異議申し立てをしなかったら、今度は仮執行宣言付支払督促が送られてきます。
これが送られた時点でも支払督促と同様に2週間の猶予期間があります。
支払督促を受け取った際に異議申し立てするのを忘れてしまったが、本当は任意整理をしたい!という方は、ここがラストチャンスです。
仮執行宣言付支払督促を受け取って2週間以内に異議申し立てをすればギリギリですが、任意整理をすることができるようになります。
もしも受け取っても2週間以内に異議申し立てをしなかった場合、仮執行宣言付支払督促が確定してしまいます。
これは判決の確定と同じことを指しますため、任意整理を行おうとしても「時すでに遅し」となります。
したがって任意整理をしたいのならば、最低でも仮執行宣言付支払督促を受け取って2週間以内に異議申し立てをする必要があることを忘れないでください。
これを過ぎると督促の内容に従わざるを得ません。
訴状の場合
それでは次に裁判所から送られてきた通知が訴状だったケースを解説します。
訴状が送られてきた場合、まずは第1回口頭弁論期日を確認してください。
第1回口頭弁論期日とは、最初に裁判所に出頭する日時のことです。
もしもあなたが任意整理をしたいと考えているなら
- この期日に裁判所へ出頭して異議を申し立てる
- この期日の前に裁判所に答弁書を提出して異議を申し立てる
のどちらかを行う必要があります。
これを怠ると、訴状に対して異議の申し立てがないと判断され期日の後にすぐ判決内容が確定してしまいます。
強制執行を避けるためにも、訴状を受け取ったら第1回口頭弁論期日までに裁判所に出頭するか、期日前に裁判所に答弁書を提出して異議申し立てを行い、それから任意整理を専門家に依頼しましょう。
ここまで裁判を起こされた後にどのタイミングで任意整理をすべきかについて解説してきました。
ここからは、あなたが裁判を起こされた後に任意整理を行ったと仮定して話を進めていきます。
そのうえで、裁判を起こされた後に行う任意整理と、裁判を起こされる前に行う任意整理でどんな違いがあるのかについて解説します。
ぜひ最後までご覧ください!
裁判を起こされる前と後の任意整理の違い
それでは、裁判を起こされた後に行う任意整理と、裁判を起こされる前に行う任意整理の違いについてお話します。
これは一概には言えませんが、結論から申し上げると、裁判後に行う任意整理は、前に行う任意整理と比べると和解条件が厳しくなる傾向にあると言えます。
なぜ条件が厳しくなるのか?これは考えればごく当たり前なことです。
なぜなら、債権者は裁判を起こすまでに催告書や督促状を何度も自宅に送付したり、裁判手続きを弁護士に依頼したりと、すでに多額の費用を投じているからですね。
となると当然、より多くの債権を回収したいと思うのは自然のこと。
なので、通常の任意整理ならできたはずの利息のカットに応じてくれなかったりといったことは全然あり得ます。
また、裁判を起こされたということは、債務者が催告書や督促状を無視するなど、不誠実な対応を取り続けてきたということを意味します。
つまり裁判に至るまでに、債権者にとって債務者の信用は地に落ちているわけです。
そのため、交渉に応じたところで和解内容どおりに債務者がきちんと返済をしてくれるか
ということに対し、債権者は疑心暗鬼になっています。
したがって、通常の任意整理よりも厳しい条件を課すというのは、債権者の心情を考えれば致し方ないと言えるでしょう。
そのため、やはり任意整理の恩恵をちゃんと受けたいのなら、裁判を起こされる前に行うのが一番です。
ここまで、裁判を起こされた後でも任意整理をすることは可能だが、和解内容は従来よりも厳しいものになるということを解説してきました。
任意整理ができたら裁判はどうなる?
ではここから、裁判を起こされた後に任意整理による和解交渉が成立した場合、裁判はその後どうなるのか?について解説していきます。
この場合の「その後」には2つのパターンが考えられます。
裁判上の和解
1つめは裁判上の和解がなされるパターンです。
裁判上の和解とは、その名の通り、裁判所を交えて債権者と債務者が支払について合意をすることです。
この合意によって債権者が起こした訴訟には決着がつきます。
もしも和解後に債務者が支払を怠った場合、債権者はこの和解を根拠に、債務者の給料や財産を差し押さえるなどの執行手続をとることができるため、裁判が終わって一件落着、ではなく、その後の支払いも覚悟を持って継続していく必要があります。
そのぐらい、裁判上の和解には強い効力があります。
裁判外の和解
2つめは、裁判外の和解がなされたのちに債権者に訴訟の取り下げをしてもらうパターンです。
裁判外の和解とは、裁判所を交えないで当事者同士で交渉して支払について合意することを指し、つまり任意整理のことを示しています。
こちらは裁判上の和解とは異なり、和解後に債務者が支払を滞納したとしても、すぐに債務者の給料や財産を差し押さえるといった強制執行はできません。
そのため、債務者が支払を滞納した場合、債権者は改めて和解内容通りの支払を求めて裁判を起こすこととなります。
また、裁判外の和解は裁判上の手続きではないため和解の成立=裁判の終了ではありません。
裁判を正式に終わらせるためには、債権者に訴訟の取り下げをしてもらう必要があります。
訴訟の取り下げがなされて、初めて訴訟は終了です。
逆を言うと、訴訟の取り下げがなされないと、訴訟は終わりません。
訴訟を起こされた場合は、和解に至ったならば何らかの形で、債権者に訴訟の取り下げをしてもらわないと決着が着かないのです。
任意整理しても和解が成立しなかった場合
では、逆に任意整理を行っても和解が成立しなかった場合、その後の裁判はどうなるのでしょうか。
あまり考えたくないことではありますが、こちらもどうなるのかを、しっかりと知っておきましょう。
任意整理を行っても和解が成立しなかった場合、債務者の今後について裁判所が判決を下すことになります。
そして判決で債務者が敗訴した場合、その後すぐに強制執行による差押えが行われます。
預金口座の差押えや給料の差押え、不動産があれば不動産も差押えを受けることとなるでしょう。
これには法的な強制力があるので、債務者に拒否権はありません。
こうならないためにも、任意整理の段階で和解を成立させておく必要があります。
ここまで、任意整理は裁判を起こされた後に行うことはできるが、裁判を起こされた後だと和解の条件が厳しくなるし、場合によっては和解が成立しないこともあるということを解説してきました。
その意味では、やはり任意整理をするなら裁判を起こされる前の方が、望ましいと言えるでしょう。
任意整理以外の解決策
最後に、裁判を起こされた後に任意整理以外で借金問題を解決する方法についても解説しておきたいと思います。
裁判を起こされても、任意整理の費用が払えなかったり、借金が高額すぎて任意整理を行っても効果的ではなかったりといった理由で任意整理に前向きになれない方もいるでしょう。
そんなときは個人再生や自己破産を検討することをおすすめします。
個人再生や自己破産は、すでに強制執行による差押えの判決が下りてしまったという方も行うことができます。
個人再生や自己破産は、法的強制力のない任意整理と違って裁判所を介する法的手続きなので個人再生による借金の減額や、自己破産による借金の免除が認められれば債権者はそれ以上借金を取り立てることはできず、強制執行による差押えもストップします。
ですので、差押えの判決を下されてしまったという方も状況を改善するために、まずは専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は主に任意整理について解説しましたが、個人再生・自己破産を含めて債務整理は、借金で苦しんでいる方にとっての強い味方なので、
現在、借金生活で悩んでいる方は、まずは気軽に弁護士や司法書士などの専門家に相談してみてください。
きっと借金解決の糸口が必ず見つかるはずです。
こちらの公式LINEでも、借金や債務整理の無料相談を受け付けています。
今回の記事を見て少しでも債務整理について興味を持ちましたら後で手遅れになる前に、ぜひ今すぐLINE登録してみてください。