自己破産と聞くと「職場にバレてクビになるんだよね?」「家族にも迷惑がかかるんでしょ?」などと不安に思うかもしれません。
しかし、これらは全くの誤解なんです。
では、自己破産をすると起きる、「本当のデメリット」は何なのか?気になりますよね?
そこで、この記事では自己破産の仕組みと、自己破産すると起きる7つのデメリットについて解説します。
また、自己破産のよくある8つの誤解についても解説するため、「自己破産を考えているけど、デメリットをちゃんと知っておきたい!」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
自己破産とは?
それではまず、自己破産とはどのような制度なのかについて簡単に解説します。
自己破産とは裁判所に申立を行い、自分の借金を免除、つまり0円にしてもらうという制度です。
大きく3種類ある債務整理の中でも、借金の減額幅が一番大きく、借金を0円にできるというのが、最大のメリットです。
自己破産の流れ
自己破産をする場合、次のような流れになります。
まず、専門の弁護士に自己破産の依頼をします。そうすると「受任通知」というものが債権者に送られ、このタイミングから取り立てがなくなります。
次に、財産の状況を示す書類など必要書類を用意し、裁判所への申立を行います。
申立から即日または約1ヶ月のうちに裁判官との面接があり、そこでなぜ自己破産したいかなどを説明します。
ここで裁判所が破産手続き開始決定というものを出すと、次に、今持っている財産の処分が始まります。
手元にある財産を管財人という財産の処分を請け負う人が、査定し値段を決めていきます。
それが終わるともう1度裁判所で免責審尋という手続きが行われます。そこで借金の免責が認められます。
その後、処分した財産を債権者で分配し免責許可決定の確定が出れば、借金が0円になります。
ここまでの手続きをするのに弁護士への依頼から、約半年〜1年の期間が必要となります。
自己破産の7つのデメリット
このような手続きで行われる自己破産ですが、実際にどんなデメリットがあるのでしょうか。
自己破産のデメリットは以下の7つです。
- 財産を手放す必要がある
- 債権者を選んで破産することができない
- ブラックリストに掲載される
- 連帯保証人に迷惑がかかる
- 官報に掲載される
- 職業制限がかかる
- 税金の支払いを免除されない
それぞれ詳しく解説していきます。
財産を手放す必要がある
まず、1つ目「財産を手放す必要がある」についてです。
自己破産をした場合、その時持っていた財産は処分して手放す必要があります。
例えば、家や車なども対象となります。
しかし、現金で99万円までは「自由財産」といい手元に残すことが可能です。
また、財産を処分されたくないからといって、財産を隠してしまう事例もありますが、これは絶対にNGです。
もし、隠している財産が見つかれば破産が認められない場合もあります。
債権者を選んで破産することができない
2つ目のデメリットは「債権者を選んで破産することができない」ということです。
複数の会社や金融機関から借金をしているケースで、
例えば住宅ローンのある銀行は債務整理せずに、消費者金融だけ債務整理するという
特定の債権者だけを選んで破産するということはできません。
自己破産ではなく、任意整理の場合は債権者を選ぶことができます。
一方、自己破産の場合は、一律で全ての債権者が債務整理の対象になります。
ブラックリストに掲載される
3つ目のデメリットは「ブラックリストに掲載される」ということです。
債務整理を行うとその情報が信用機関の信用情報に登録されます。
このことをブラックリストに載ると言います。
ブラックリストに載ってしまうとクレジットカードの利用ができなくなってしまったり、新たにローンを組めなくなったり、携帯の分割払いができなくなってしまいます。
しかし、一生できないという訳ではなく一定期間が経つと、リストから消されるため、その時までの制限となります。
連帯保証人に迷惑がかかる
4つ目のデメリットは「連帯保証人に迷惑がかかる」ということです。
自己破産によって無くなるのは自分自身が払う義務であって、借金そのものが消える訳ではありません。
したがって、自己破産した場合債権者はその連帯保証人に、返済を要求するということになります。
ただ、連帯保証人も合わせて債務整理を行えば、支払いの猶予を認められる場合などもあります。
官報に掲載される
5つ目のデメリットは「官報に掲載される」ということです。
官報とは国が発行する機関紙で、主に新しく施行された法律の広報などの目的で発行されています。
簡単にいうと、国が作る広報誌のようなものです。
自己破産をすると金融機関に通知するためにこの官報に名前が掲載されます。
掲載は避けることができませんが、ここから自分が自己破産したと、周囲に知られてしまうことはまずありません。
というのもこの官報は、一般の書店などには流通しておらず、裁判所併設の本屋などで売られています。
みなさんも初めて聞いたかと思いますが、認知度はかなり低いです。
なので、官報に掲載されたことで、周囲に自己破産がバレてしまう可能性は、極めて低いと言えます。
職業制限がかかる
次に、6つ目のデメリットは「職業制限」がかかるということです。
自己破産をすると士業、公務員、警備員や古物商などの職種、企業や団体の役員になれないといった民法上の制限がかかることになります。
これらの職業についている人が自己破産する場合は、その職業から離れる必要があります。
ただし、役員に関しては、いったん委任契約が終了となりますが、破産後すぐに復職できます。
税金の支払いを免除されない
最後に、7つ目のデメリットは「税金の支払いを免除されない」ということです。
自己破産をするとほとんどの借金は0になりますが、残念ながら税金の支払いは免除されません。
具体的には所得税、住民税、自動車税、固定資産税などは全て支払う必要があるため、注意しておきましょう。
以上が7つが自己破産のデメリットでした。
こう見ると結構デメリットが多い気がしますが、それだけ借金をチャラにできるという自己破産のメリットが大きいということなんです。
自己破産よくある8つの誤解
最後に、現役弁護士の私が実際によく聞く、自己破産の誤解について解説します。
よくある誤解は以下の8つです。
- 必ず勤め先にバレてクビになる
- 必ず知人や家族にバレる
- 配偶者や家族もお金の借り入れやクレジットカード作成ができなくなる
- 戸籍や住民票に載る
- 選挙権が無くなる
- 年金や生活保護が受けられなくなる
- 賃貸住宅から退去させられる
- 引っ越しや海外旅行ができなくなる
それぞれ詳しくみていきましょう。
必ず勤め先にバレてクビになる
まず、1つ目は「必ず勤め先にバレてクビになる」という誤解です。
自己破産だけを理由に会社が従業員を解雇するということはできません。
なので、自己破産をしたからといって必ずクビになることはありません。
必ず知人や家族にバレる
2つ目の誤解は、「必ず知人や家族にバレる」という誤解です。
自己破産は個人の手続きなので、家族や知人などに絶対にバレてしまう、ということはありません。
もちろん、官報には載ってしまうので調べればバレますし、裁判所を介すために、はがきなどでバレてしまう可能性はあります。
ただ、最近では家族にバレないように協力してくれる弁護士事務所もあるため、家族にもバレたくないという方はぜひ、そのような事務所を探してみてください。
配偶者や家族もお金の借り入れやクレジットカード作成ができなくなる
3つ目は「配偶者や家族もお金の借り入れやクレジットカード作成ができなくなる」という誤解です。
先ほどもお話しした通り、自己破産は個人の手続きなので、配偶者や家族が借り入れできないくなったり、
クレジットカードが作れなくなったりすることはありません。
戸籍や住民票に載る
4つ目の誤解は、「自己破産すると戸籍や住民票に載る」という誤解です。
自己破産してもその情報が戸籍や住民票に掲載されることはありません。
掲載されるのは先ほど解説した官報のみです。
選挙権が無くなる
5つ目は、「破産すると選挙権が無くなる」という誤解です。
憲法で認められた国民の権利なので、自己破産したことでこの権利が失われるということはありません。
年金や生活保護が受けられなくなる
6つ目の誤解は、「年金や生活保護が受けられなくなる」という誤解です。
年金をもらう権利や、生活保護をもらう権利というのも法律で認められている権利です。
自己破産をしたからといって、この権利を失うことはありません。
賃貸住宅から退去させられる
7つ目は、「破産したら賃貸住宅から退去させられる」という誤解です。
破産を理由に家主が住んでいる人を退去させることはできません。
家賃の滞納やその他の迷惑行為など相応の理油があれば別ですが、自己破産したことだけを理由に退去を迫られるということはありません。
引っ越しや海外旅行ができなくなる
最後の8つ目は、「引っ越しや海外旅行ができなくなる」というのも誤解です。
自己破産をしても引っ越しや海外旅行も可能です。
ただし、海外旅行の場合は財産の処分を行なっている期間の場合などは
申請が必要ですが、認められれば海外旅行をすることも可能です。
以上、自己破産についての誤解を8つご紹介しました。
自己破産について、その言葉の印象から、誤解されることが多いため、ぜひ気をつけてくださいね!
まとめ
今回は「自己破産の本当のデメリット」というテーマでお話してきました。
自己破産とは裁判所に申立を行い借金を0円にしてもらう制度です。
また、自己破産については「会社をクビになる」や「年金がもらえなくなる」
といったこれらの多くの誤解がありました。
自己破産のデメリット、誤解しないようにぜひ気をつけてくださいね!